仮題:一太郎の夏

蝉の声がうるさく響く真夏の午後。
じっとりと身体を覆う熱気に体中から汗が吹き出していた。
俺は一人ある人物を尋ねていた。
古い友人…俺がまだ清学館の高等部にいる頃、同級生だった奴。
特別仲がよかったわけじゃないが、良く居る”何年か後に出会うとお互い忘れてる”ような奴…のはずだった。
同じ特進クラスだった俺たちはお互い高みを目指し、俺は京都の大学へ。あいつは東京の大学へ。
それ以来会ってはいなかった。 俺はそのまま院に残り、卒院後清学館大の研究生として戻ってきた。 あいつはどうしているのやら…なんて考えもしないぐらい記憶から居なくなっていたが、つい先日、手紙が届いた。最初は宛名を見てもピンとこなかったが、卒業アルバムと手紙の「薦山生体工学研究所」の言葉でなんとか記憶をたどることができた。
あいつは真面目にサイボーグを作りたいと言っていた。
人工皮膚や義肢がもちろん、コンタクトレンズまでも生体を模した工業品というなら、それをまとめて人間らしき工業品をつくり出すということも可能だろう、というSFじみた話だ。
学生時代熱っぽくそれを語る彼の姿は、伝承や説話にまみれた民俗学を志す自分の世界よりも壮大なファンタジーの世界と思えた。 そもそも研究者と言うモノは自らの妄想を具現化しようと”証拠”を求めて足掻くものなのかもしれない…。
手紙には卒業してからの彼の進路と、自らの研究に同調する仲間がいたこと、研究の成功と仲間の裏切り、そしていまの研究所に拾われ大がかりな研究に没頭していること。そして久しぶりに会いたいということ… 何を今更会いたいもクソもあるかと言うぐらい音信不通だったのに、急に会いたいなどと随分と勝手な。変な宗教の勧誘か…と普段なら破り捨ててしまうところだが、何も予定のない盆休みの暇さ加減と、学生時代の彼が語った夢とがどんな化学変化を起こして日々剣呑とした日常を好む自分をつき動かしたのかはわからなかったが、足は研究所があるという尼崎へと向かっていた。
阪急武庫之荘駅。 改札から出るとすぐに、あの頃と変わらない顔が出迎えた。
「壇呉…一太郎…だよな?」
「薦山太一か?」
あの頃と比べたら少し痩せただろうか。 いや、やつれているのかもしれない。
薦山は根っからの勉強人間だったから、運動部には所属していなかったが、体格はそんな悪くない奴だった。身長も175ぐらいで決して低くはない。当時短く刈そろえていた髪は今はボサボサに伸び、Tシャツに綿パン姿がやや精気なさげに見えた。
「壇呉はかわらんなぁ、今も重量挙げやってるのか?」
「いやぁ、さすがにもうやってない。今は軽くトレーニングする程度。」
「ほれぼれする体格だな。うらやましいよ。」
ぼりぼりと頭を掻きながらうつむき加減に歩いていく。目線はあわせない。昔から薦山はこうだった。 「まぁ勉強はお前の方ができたけどな」
「高校の勉強なんざ、世の中に出てみたら役に立たない事も多いさ」
照れているのか微妙に口元に笑みを浮かべて、やっぱりうつむき加減に歩いている。
「…」
「…」
無言が続いた。
同じ特進クラスとしてもあいつは理系、俺は文系だ。趣味が合うわけでもなく、案の定話は続かなかった。ここは早めに核心に触れておく方がよさそうだ。 「なんで急に俺に会いたいなんて手紙よこした?」
一瞬ピクッと眉間が動いたが、すぐに気を取直したか俺の方を見て
「今更って思ったろうが、どうしてもお前でないと頼めないことがある。」
ほらきた。 やっぱりそういうことか。
「何?宗教とか金かせとかは止めてくれよ、研究生なんて貧乏なもんなんだから…」
「いや、そんな事じゃない」
立ち止まって俺の両腕を掴み、じっと目を見てくる。腕を掴む手には力がこもっている。
「今は…俺を信じてついてきてくれ。研究所で詳しい話をしよう。」


しばらく歩くと、木々がうっそうと茂り、赤いレンガの建物に蔦が這っている、いかにも古めかしい 建物が現れた。入り口の門には、薦山生体工学研究所とプレートがはめ込まれている。
「へぇ、お前の名前がついてるのか」
さっきの会話からここに着くまでは無言で通したが、やはり間が持たず俺から話し掛けた。
「まぁな、ここは代々所長の名前がつくんだ」
薦山はよれよれのズボンから鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。ガチャガチャと鍵穴と格闘しているようだ。建物は相当老朽化しているようだ。
「所長か…出世してるじゃないか。」
「そうでもないさ」
終始暗い表情の薦山を見て、何か嫌なことに巻き込まれるのではないかと不安がよぎる。
扉を押し開けると、外の熱気に対して、ひんやりとした空気が建物内から流れてきた。
涼しいという感覚ではなく、古い建物の持つ雰囲気か、まるで心霊スポットに来た時のようだ。
薦山が中に入っていく。俺も遅れないように後を着いていく。
「…生体義肢は知ってるよな?」
「サイバーリム…?ああ、何年か前に新聞で読んだな、どっかの科学者が画期的な新発見で実用化が何年か早まったって言う通電義肢だろう?」
あの記事はSF好きな三太郎が喜んで見てたから覚えている。虚構が虚構でなくなるのも時間の問題だと。研究者の不在が叫ばれる昨今の日本にしては、なんとも夢のある記事だった。
人間に対して拒絶反応が起こるリスクを格段に落とし、脳からの微弱な電流を拾い、思いのままに動く義手や義足…自ら選んで高性能な義肢に換装することも可能になるだろう、と記事は締めくくられていた。まさにSFの世界だ。
「あれはうちの教授の研究成果なんだ」
「へぇ、すごいじゃないか」
大きな研究施設だが、人の姿は見られない。盆だから休みなんだろうか?
所長室と書かれた部屋に入ると、クーラーが効いているのか人工的な涼しさにさっと汗が引く。
ソファに座ると、向かいに座った薦山が深刻な顔で俺を見ている。
「すまんな、茶も出せずに。研究生にはみな休みをやってるもんでな」
「いや、いいさ。それより、頼みごとってのはなんなんだ?」
外の日差しはカーテンにさえぎられ、わずかな隙間が光を漏らす限りだ。
暗い部屋の中、薦山の眼鏡だけがわずかな光を返していた。
「それにはまず、生体義肢研究がどういう進化を遂げているか説明しないといけないな…」
エアコンも涼しめに設定されているはずだが、薦山の額には汗が浮かんでいる。
薦山が語り出したのはこうだ。
研究発表から賛同する企業や政府からも資金が調達され、サイバーリム研究は加速度がついたように順調に進んでいた。何班かに別れそれぞれの研究を続けていたが、薦山がトップになって研究していた義肢適応、人体との拒絶反応を抑える実験班に、ある日政府の人間を名乗るものが現れたという。
「最初は何者かわからなかったが、後からわかったところによると、教授と話していたのは陸幕のお偉方だったみたいだ。」
「陸幕?って…」
「陸上幕僚監部。防衛省の直下で陸自の最高機関だよな。教授とどんな話をしたのかしらないが、その日から俺達のチームは陸自の主導の下、この尼崎研究所で別働研究を始めることになった。」 …嫌な雰囲気は的中したみたいだ。ここまで聞いたら引き下がろうにも下がれない。
「医学、遺伝子工学、日本、海外を問わず様々な博士との共同研究だ。こんな大きな案件を扱うことなんておそらく普通の人生でありえないことだろう。俺は熱狂して研究に没頭した。情熱が正義やモラルの眼くらましになるなんて思いもつかないようにね」
「…大体わかってきたような気がするけど…」
日本だけならまだしも、海外との共同研究…陸自。これはもう新たな兵器の開発に違いあるまい。 「生体義肢も全身に使えば機械で動くロボットに過ぎない。現段階では脳だけは機械化できないが、もしできたとしてもそこに魂の存在は無く、ある程度プログラムできても指示以外の繊細な命令や恐怖を受け入れることはできない。彼らが欲しがったのは、動く人形ではなく、更なる人間の進化だった」
人間の進化…
進化と力の入手は同時に行われるものなのかもしれない。人体の神秘に挑んだ代償が進化というのならば、その力を手に入れたとしても自然なことだ。しかし、それは道義的に受け入れた時に限られる。兵器利用はいつの時代も人々の熱狂の中受け入れられ、あらぬ禍根を残すことになる。
はたしてそれが道義といえるだろうか。
「人体実験は人道的にそう簡単に行えないが、リム研究にはどうしても人体が必要だ。精神的ストレスなども図りたいからどうしても丸ままの人間がね。」
「まさか…」
「そう、サイバーリムの研究に、まず人工的に人間を作り出すところから始まったんだ。」
クローンか…動物での成功例は俺達もニュースで見たとおりだが、それを人に当てはめることはいまだ議論の最中だ。まぁこんな秘密裏な研究で、最新の科学を元に人が生まれてもおかしくは無いだろうが。
「最初から兵器利用という前提で動いていた為、兵器として最良の遺伝子から作られ、人々がおおよそ警戒しない外見が必要だった。外見はある程度サイバネティクスで変更はできるが、上からはあくまで自然な仕上がりを望まれてね…」
「最良の遺伝子って?」
「第二次大戦で、アメリカが最も恐れたのは日本兵の意識のベクトルだという。国全体が天皇という総長に導かれ、全体が一つとなり玉砕も辞さない兵隊。死を恐れぬ軍団ほど怖いものはないよ。俺が着目したのはそこだ。」
日本兵の玉砕覚悟の精神は、戦中の教育の賜物だ。当事の人間の遺伝子を使ったとしても、教育が上手く行かなければ現在の若者と大差無いものになるだろう。
「…壇呉は魂の存在を信じるか?」
「あ、うん…どうだろうね。なにかそんなものに突き動かされている感を感じる時はあるけどね。」
「それだよ。俺が期待したのは。戦時中に生きた人間の魂が刻まれた遺伝子に…」
話しているときの薦山の眼は鈍く光り、那由他の先を見るように虚ろで、しかし妙な力を秘めていた。彼のこの道義から外れた研究も魂に突き動かされた結果なのだろう。
「ちょっとこっちに来てくれないか」
薦山は席を立ち、後ろにある扉を指差した。
扉の向こうは薄暗く、下へ降りる長い階段になっているようだ。
「おおよそ最良の結果は得られた。」
照明で照らされた長い階段を下りながら、薦山が口を開いた。
「まだ子供の状態で四肢は全てサイバーリムに代えられ、その他器官も順次代えられていった。特別な教育と紛争地への投入実験、どれも俺達が想像した以上の結果になり、上のものも喜んださ。研究成果はそのまま引き継がれ、俺の手を離れ新たなプロジェクトも立ち上がっている。そんな中、ジロはおかしくなった。」
「ジロ?それがその…」
「ジは重機械化歩兵、ロはイロハニ…の順番で2番目に開発されたということだ。」
旧陸軍で使われた兵器の型番のつけ方だ。重機械化歩兵…
「ジロは上の奴らの悪趣味な名前さ。研究員達はニホン君と読んでる。」
「ニホン君ね…」
まるで地の底まで歩いてきたかのような長い階段の下、大きな南京錠で閉ざされた扉がある。
その扉の向こうから、なんともいえないうめき声が聞こえてきた。
「これは…?」
「ジロの…声だ…」
薦山の額には冷や汗が流れ、心なしか手が震えているようだ。
「日に日に”発作”の回数が増えていくんだ…朝も夜も問わず、ジロの声が聞こえるんだ…」
「薦山…」
「この中を見て、俺を軽蔑しないでくれよ」
薦山が南京錠を開け、その扉を開いた瞬間、俺達は壮絶な異臭に包まれた…いや、男ならば嗅ぎ慣れた臭いに…。
扉の向こうには、医療機器だろうか、何に使われるのかわからない機材とベッドが一つ。
うめき声と聞き取れた声は決して苦悶の声ではなかった。ベッドの上で男性としては少し高い声で声を上げる彼は、苦しいというより波のように襲ってくる快楽に身を悶える声だ。
そう、射精の瞬間のように。
声とともにグチュ、グチュという卑猥な音も聞こえてくる。
部屋を包む精液の独特のにおいと共に、俺はジロと呼ばれる人造の男に何が起こっているのか、表面的なことはわかったような気がした。
「ある日、内戦の続くアフリカ地域への試験投入後おかしくなり始めた。最初は夜にひっそりと肛門に指を挿入するぐらいだったが、その後紛争地域へ投入するたび激しくなり、一ヶ月前には両腕を突っ込んでいる所を発見された。一定量の精神的ストレスが溜まりすぎたのか、リムのせいでホルモンのバランスが崩れたせいなのか…」
ベッドの上にはシーツで覆われ、もぞもぞと動く何かが居るのがわかる。シーツには無数の黄色い染みと、たった今放出されたのであろう濡れた部分がある。しかし声はまだ続いている。
俺は一気にベッドの上のシーツをはがした。

バサッ

ベッドの上には、まだ小さな…一番下の三太郎よりもまだ小さいかもしれない。裸の少年が赤子のように丸まって横になっていた。肌も人間と変わりない…見事な再現力だ。右目と頭部に包帯を巻き、肩から胸、腹にも血が染みた包帯を巻いている。日に焼けたその姿は普通に少年として街を走り回っていてもおかしくない。普通の少年ではありえないところは、この肛門に深々と突き刺されたバイブレータだろう。直径15センチはあろうかというそれは、電子音を響かせながら彼の腸壁をえぐり、粘液をしたたらせながら動きを止めない。

「これは…」
俺は非難するように薦山を見た。
「彼には年齢とか言う縛りは無用だよ、全身をリムに入れ替えてそれ以来、性的にも発育は止まった。しかし最近なんだ。こんなことになり始めたのは。」
「でもまだ子供じゃないか!」
「人間が一番警戒しない外見といっただろう?これが答えなんだよ。兵器としてのね」
うすら笑いを浮かべる薦山に、俺は無意識に胸倉をつかんで殴りかかっていた。
「お前…なんでこんな…」
「後悔した時はもう遅かった…ジロは目の前に居る…俺が手をつくし、ジロに必要なものは何か考えていった。戦争という極限状態を経験し、ああなってしまった彼には、おそらく心の隙間を埋める様な新しい出会いが必要だと。」
薦山の目には先ほどの鋭さはもう無く、どこか自分の息子を心配する親のような顔になったような気がする。
「それが…俺なのか?」
「ああ。そうだ。お前でしか無理だ。」
「なぜ?」
つかんでいた胸倉を離し、薦山の肩をつかむ。
「心を満たすと同時に、性的にも満たされないとおそらくまともに話すことすら難しい状況だろう。彼の性を満たすには、この開ききった穴に合うモノの持ち主じゃないとな。」
そう言いながら俺の胸をコツンと叩いた。
そういえば…

あれは俺がまだ清学館の高等部時代。ウェイトリフティング部の後輩に告白され、俺も嫌じゃなかったからそのまま体育倉庫で事に及ぼうとした時…
「先輩…さすがにこんな大きいのは無理です!」
なんて言われて、告白されたのにフられてしまった。
あの時、薦山はたまたま倉庫前を通りかかって一部始終を見られてたんだった。
俺の唯一の高校時代の甘くて苦い思い出。

「…覚えてたのか」
「忘れられるか?あんなデッカイもん、ホモじゃなくても一度見たら忘れられんワイ」
「…」
確かに俺のモノはビックリするぐらいデカイ。
まぁ家系なんだろうけど、親父も弟達もみんなデカイ。
弟達はまだそんな深刻なデカさじゃないからそこそこ学園で遊んでるみたいだけど、俺の方は深刻だ。あの告白以来、家族以外が俺のモノに触れることは無い。
「未だに誰ともデキてなさそうな気がするけど?」
「う…そんなこたぁ…」
誰かとセックスする以前に相手が居ない。フィストでガバガバな奴も逃げ出すサイズだし…
「お前もここらでリハビリが必要なんじゃないのか?」
そう言いながらジロに突き刺さったバイブを出し入れする。
「ひぃあ!あぁぁぁ!」
ジロの口から絶叫が漏れた。
「…」
「こいつもこれで苦しんでいるんだと思うんだ。普通性欲ってのはコントロールできるよう人間ができてから身につくもんだ。急にこうなっってしまって、一番混乱してるのはこいつだ。」
先ほどの刺激で寝返りをうったジロの顔があらわになった。
幼い、というかまるっきり子供の顔だ。どこと無く三太郎に似てるのは、あいつも童顔だからだろう。 全身がリムならばある程度外見的に筋肉質に見せることもできる。この身体もそうなんだろう。顔と不釣合いな身体をしている。
「生体義肢なのは足、腕、胴体。頭と股間は生のままだ。」
そう言いながら薦山はジロのチンポを握った。
「うぁ…あがぁ…」
ジロが半開きの口からよだれを垂らしながら反応する。
一握りしてまだ余るほど…なかなか立派なモノを持ってる。太さも充分だ。
俺はこんな小さい子が好きなわけではないが、この太さのバイブが入る肛門なら俺のモノを受け入れられるかもしれない、と心のどこかで思い始めていた。
「念のため、痛みは快感に変換されるようプログラムし直してある…」
痛みを快感に…脳の内部も一部いじってあるのか?
「邪魔はせん。ジロを楽にしてやってくれ」
そう言って、薦山は振り向かず部屋を出た。


「あ...あう・・・」
はぁ、はぁと激しい息使いのまま、苦しそうに俺を見つめる。口の端からは涎をたらし、顔は頬を真っ赤に染めている。相当興奮しているみたいだ。
「苦しいならしゃべらなくてもいいよ」
彼のベッドにすわり、俺も彼...ジロに近づいて見てみる。
全く人間と変わらない。肌の質感も、産毛も。
これが本当に身体のほとんどが機械の身体なんだろうか
頬に触れてみた。
「ひぅっ」
ビクっとジロが震える
やわらかい。そして体温も感じる。
「あっ...あぁ...おねがい...しま…」
震える声で話し掛けてくる
「おし...おしりがっ...それと...」
必死に声を出そうとしているのがわかる。
「わかってるから。もう安心していいよ」

俺はジロの上半身を優しく抱き上げ、あおむけに寝かせた。
股間のモノは大きく天を突き、透明な汁をとめどなく流している。
「あつっ」
痛そうに顔をしかめる。その直後、のけぞるように痙攣したかと思うと、ひときわ赤黒く肥大した亀頭からビューっ!と白濁液を撒き散らした。
彼の痛みはそのまま性的な刺激に変換されると言っていたが、これほどとは...
全身を痛めている今、ジロは波のように襲い掛かる性的刺激に耐えているのだ。
「ジロ・・・」
俺はベッドに上がり、服を脱いだ。
その様を見て、ジロも起き上がり、正座の格好で俺をじっと見ている。
ズボンを下ろすと、俺の半勃ちになったチンポはビキニに収まりきらず、わずかな布の端から飛び出ていた。
ジロの前に座り、ジロの頬をなでる。
やはりやわらかい。子供の頃、生まれたての三太郎のほっぺに触った時みたいだ。
そのまま強く抱きしめた。
抱きしめながら、ジロの尻に手をやる。
ジロは黙ったまま、俺のなされるがままになっている。

直径15センチはあるだろうか、人間がここまで肛門が広がると、通常の生活が不可能になるだろう。 ジロの尻を征服するバイブを、ゆっくり外していく。
ぐじゅっ。じゅるっ。
いやらしい音を立てながら、バイブを抜き去る。
「ふっ...あぁぁっ」
俺の胸の辺りで、ジロが声を上げる。
両手で俺の身体をしっかりつかみながら、肛門いっぱいの異物をひり出している。
ゴポッ!
という音とともに、長大なバイブが抜けた。40センチほどあるだろうか。この長さが入るとなると、腹部にはだいぶ余裕があるらしい。
かっぽり穴の空いた肛門は、ひくひくと動きながらローションなのか、それとも肛門の粘液なのか、ドロドロした液体でぬらぬら光っている。
指で触れると、こんもりと盛り上がった肛門の縁は、熱く、柔らかく指を包んだ。
二本、三本...と指を増やすが、ジロの顔色は変わらない。
思い切って5本の指をすぼめて...いわゆるフィストファックの要領で腕を挿入した。
「はぁっ!」
ジロがのけぞる。やすやすと入った腕を身を乗り出してもっと奥深くまで挿入する。
時折、腸の粘膜を通して固いものが触れたが、これが彼の中に入っている機械機構なのだろう。
ずんずん挿入していくうち、俺のチンポは最大限に怒張していた。
夏の暑い中、汗で蒸された股間は相当な臭いがしているだろうが、
ちょうどジロの目の前にそれが向く形になり、ジロはそれに抱きついた。
割れ目から透明な汁が吹き出る。
親父譲りのこの巨根は、射精のメカニズムまでそっくりと来ている。
普通、ダラダラと流れるはずの先走りは、強く握られると射精したかのように飛び出てくる。
じゅわっ、じゅわっとジロの顔にかかる先走りを、ジロは旨そうに舐めている。
腕でジロの肛門をかき回すと、それにあわせるようにジロが俺のチンポにすがりつき、亀頭の割れ目に舌を這わせた。
コレは、いけるかもしれない...
俺の無駄にデカイチンポも、コレなら...
ジロの肛門から腕を抜き、俺のチンポに抱きついたジロを離して、ベッドに寝かせた。
何が起こるか、ジロはわかってるみたいだ。
「ゆっくりやるから、痛かったら言うんだよ」
「...うん」
ジロは大きく股を開いて、尻をもち上げる。
ぱっくり開いた肛門が、俺の亀頭に触れた。
...やっぱり、まだ少し広げた方がいいか?
じっとり湿った入り口にグググっと腰を近づけた。
「ひうぅぅ!きっ...きもち…いい!!!あうぁぁ」
亀頭のエラにかかった瞬間、最大限に開かれたジロの括約筋がブチっと避けた。
血が滲む。しかし、痛覚が快感に変換されてしまうジロには、おそらく死ぬほど気持ちいいのだろう。 「だ、大丈夫?!」
「や・・・やめないで...ください」
涙目になりながら、自ら腰を動かして俺の巨根をうずめていく。
ニュルニュル、と暖かいジロの内部に俺のチンポが埋没していく。
俺の中で、何かがはじけた。
ジロの腰をつかむと、ゆっくり出し入れを始めた。だんだんとなじんでくると、そのスピードは増し、ジロの腸がめくれ上がるほど激しく腰を動かした。
その感、ジロは俺の腕にしっかりとつかまり、俺の動きにあわせて自分でも腰を動かした。
動いている間、ジロのチンポからは熱い精液が飛び散り、俺の胸をぬらしたが、俺は夢中で腰を振り続けた。
ジロの中で何回果てただろうか。
ジロも腕につかまるほど余力が無いのか、ベッドでだらりと腕を投げ出している。
チンポを引き抜くと、大量の精液がジロのぱっくり開いた肛門から流れ出た。
「あ・・・もったいない・・・」
正気を取り戻したか、幾分かしっかりした声でジロが言った。
「足りなかったら、もっと中出ししてやるけど?」
そう言うと、顔を真っ赤にして照れている。
体中お互いの精液でべとべとになったが、そのままベッドで横になった。
「ありがとう...ございました。」
ジロは、見た目に似合わないしっかりした言葉で話した。
「いやいや、こちらこそ。もう大丈夫?」
「は、はい!」
「うん、よかった。」
「失礼ですが、お兄さんは一体...」
大人びている。この人格すらプログラムなのだろう、おそらく、当たり障りの無い丁寧な言葉使いもインプットされているに違いない。
「俺は、キミの博士に頼まれた...うーん、売り専みたいなもんかな?」
「ウリセン???」
「いや、こんな言葉は覚えなくていいよ」
こうしてみると普通の人間だ。二太郎とも三太郎とも変わらない。
「俺は壇呉一太郎。君と友達になるために薦山に呼ばれた。」
「博士が…」
ジロは天井を見つめながら、どこかうれしそうだ。
それからいつも以上に饒舌に、昔の薦山のことから、親父と母さん、兄弟の話もした。
「へぇ、弟さんが二人も居るんですか…いいなぁ、暖かそうな家庭で。僕のお父さんは博士だけど、これから兄弟はたくさん増えるんだろうなぁ…」
ジロは俺の顔を見ながら話を聞いていたが、そう言って目をそらした。
この子はわかっているのかもしれない。兵器としての自分の兄弟が増えるということの意味が。
「時々怖い夢を見るんです。暗い森の中で、一人で。周りから色んなうめき声が聞こえて...その夢を見た日は、一日中お尻が熱くなって、さっきみたいになるんです。おかしいですよね...僕、兵器なのに…」
薦山の言う魂という奴なの、何か当時の記憶のようなものが、現代によみがえった彼に再生されているんだろうか。
戦争時、死に直面し、生に執着する心が彼を支配し、身体に影響を及ぼしているのか。
「…お前はもう、戦わなくていい。」
「え?」
俺はベッドから降り、荒々しく部屋を出た。
上の部屋では、薦山がパソコンに向かっていた。
「やぁ、うまくいったようだな」
のんきに答えた。
「なんとか…ならないのか?」
「?」
わからない、という顔で俺を見た。
「あいつは…ジロは人間と変わらない!」
「そう言い出すと思ったよ、お前ならね。でも、兵器だよ彼は。超国家機密のね。」
そうなのだ。ジロのために何億という金がつぎ込まれ、今後の国防を問うものなのだ。
そう思うと、徐々にクールダウンしてきて、ガックリ肩を落とした。
そうだ。熱くなってもしょうがない。強大な権力に反するほど、俺には力が無い。
「つい昨日までは、ね」
「へ?」
くっくっくっ、と笑いながら、薦山は話し出した。
「ジロは最高のプロトタイプだったけど、子供ゆえに情緒に不安定さが残り、ほぼいじってない脳のせいで人間らしい部分を捨てきることができなかったんだ。今回の演習で見事露呈してね…まぁ、その欠点をすべて補った次の機体、「ジハ」のテスト結果は良好だったようだよ。今結果のメールが来てね。それがなかったら、こうも早く「破棄」の決定は降りなかっただろうけどね」
「は・・・破棄?」
「ああ、俺がジロの神経回路を焼き切り、四肢をちぎり、細かくした機械の部分を粗大ゴミに出す。というプロセスを破棄というが…いかんせん俺も冷血な科学者ではないのでね、自分の子を分解できるほど人非人じゃない。まぁ、どうするかは息子の意思に任せるがね…」


「と、いうわけで、一人家族が増えそうなんだけど…」
「はぁ?!何をいっとるんだお前は!!話が一向に見えん!」
大阪に向かう電車の中、親父に電話しながらジロを見た。
アイスクリームを片手ににんまり笑うジロは、とても兵器なんかには見えない。
まぁ親父とお母さんを説得するのは大変そうだけど、わかってくれるはずだ。
今日から、ジロとの新しい毎日が始まる。
そう思うと、俺も自然に笑顔になった。